(千趣会HP:https://www.senshukai.co.jp/main/top/index.html)
千趣会は、こけしの頒布販売から始まり、今は女性に向けた「ベルメゾン」という通信販売などを行っています。
2018年、業績悪化に伴い役員が退任し、現在は、梶原健司さんが社長を務めています。梶原さんが社長に就任後は、様々な苦難を乗り越え、好調に売上を上げていました。
しかし、2021年以降、基幹システムのトラブルにより、修復までに時間が掛かったことで業績が赤字となってしまった千趣会。同年のトラブル前までは、好調に推移していたこともあり、とても大きな痛手となりました。
元の状態に戻るまでにかなりの時間が必要だったこともあり、売上のみならず、顧客様も遠退いてしまったといいます。
また、タイミングが悪く、物価の高騰が始まったために、さらなる逆風に見舞われてしまいます。コロナも落ち着いてきたものの、ファッション需要は元の通りには回復しにくい現状でした。
そんな厳しいスタートとなった現在、どのような改善に取り組んでいるのか、まとめたポイントをご紹介します。
目次
初心に戻り、お客様のためのお客様起点のサイト改善へ
2022年12月頃からクロスメディアやEC販促の強化により、「ベルメゾン」の売上が回復に向かいます。
外部販促にも力を入れたことで、集客にも兆しがあり、前年よりも好調に推移しました。
ところが、システムトラブルにより、オーガニック検索での流入率が著しく低下。
トラブル前は、検索エンジンで「テーブル」や「ベッド」と検索を掛けると、「ベルメゾン」がトップに表示されていたといいます。
オーガニック検索で商品を探しているお客様は、用途や目的が明確であることから、高い購入率が期待できます。そのため、検索サイトのアルゴリズムに推奨されなくなってしまったことは、集客に関わる大きな課題となってしまいました。
千趣会は、上記のような流入が減った中で元の売上に戻すために、幅広いお客様へ外部販促を活用してアプローチを行ってきました。
外部販促の難しい点は、販促によって訪れるお客様の期待値やお店に対するイメージが、期待以上、または一致していなければ、なかなか購入に至らないという点です。
目的を持って訪れるオーガニック検索とは違った角度からアプローチを行うため、お客様の期待値に沿うような細かい修正を都度行っているといいます。
(ベルメゾン:https://www.bellemaison.jp/)
カタログからEC中心のオープンマーケット戦略
千趣会は、当初カタログを中心に販売を行うクローズマーケティングを行っていました。
マスビジネス展開で、グループ会社や自社のコミュニティーを活かしての商品提供がメインでしたが、EC強化に伴うオープンマーケット戦略に乗り出します。
現時点で、「ベルメゾン」のおしゃれさ、イメージなどの顧客評価は全体的に平均的な結果が多かったといいます。そのため、ECが主流となってきている現代で他社よりも上位に立つには、“ベルメゾンらしさ”のあるブランディングが重要となります。
これらの課題と、システムトラブルの影響による会員数の減少があったことから、ファン作りの強化に取り掛かっています。
その策として、社内にカスタマーエンゲージメント本部を立ち上げ、お客様目線のご意見を元に改善や施策などを打っていく方針です。ここには、お客様との関係性を深める目的があります。
例えば、イベントを行いお客様との接点を増やし、お客様から企業への信頼や理解度を上げていただくこと。また、認知度の向上を図りながらのファン作り、会員プログラムの充実を目指すといいます。
ロイヤル顧客様の定着の目的とプロモーションを兼ね、会員離脱を減らすCRM設計を目標としています。
リピートに繋がるデジタルとアナログの両立、ページ最適化
カタログでの注文は年々低下していますが、必要としているお客様には届けられるように配布テストを行い、カタログ製作数の削減を行いました。
また、カタログを活用しているお客様にもECサイトから購入いただけるような接点を作り、継続的なリピーターに繋がる施策も考案。LINEの導入検討も進めているそうです。
女性に向けた商品を展開していることから、ライフスタイルの変化を考慮したタイムリーなアプローチが重要です。結婚、出産、子育てと、なかなか時間に余裕がなくなるタイミングもある中で、スマホやパソコンで隙間時間を使った手軽な操作で閲覧できるページが好まれます。
こういったお客様に向けて、ECサイト上の見せ方を工夫し、1枚の画像で立ち止まっていただけるような商品詳細ページのリッチ化を目指しているといいます。
子会社としてマーケティング会社も立ち上げた千趣会は、集客のためのノウハウを自社ECに活用し、お客様の探している検索ワードに引っかかる表現に修正。SEO対策にも抜け目なく力を注いでいます。
商品のPRは人気商品のみに絞り、ヒット商品を筆頭に売上拡大
売れている商品の多くが、想いを込めて製造してきたベルメゾンオリジナルの商品。
商品数が多ければいいというわけではなく、どの商品があれば売上が安定するのか、原価や数値を精査したうえで、品揃えを絞っていく予定だといいます。
お客様が支持してくださるオリジナル商品を中心にプロモーションを掛けていき、効果的なROASとCPA獲得を目指します。
また、お客様のライフスタイルの中で、長くご活用いただけるような商品の開発や、システムトラブルによる在庫消化不良に伴い、在庫管理や発注数調整にも注力しています。
新商品の方向性とニーズに合わせた商品開発とは?
親会社がウォルト・ディズニー・カンパニーであることから、ディズニーファン、子育て、妊娠中の女性に向けたディスニーキャラクターを用いた商品を販売中。
他にも、女性のためのフェムテックに対するサポートや、大人の女性をメインに配布している「花笑むとき」といったカタログにも力を入れて活動を行っています。
また、商品のブランディング力を高め、外部のECモールや海外進出を視野に入れた今後の目標を掲げています。現在もすでに中国の子会社から、中国ECモールの「タオバオ」に商品を出店しています。
中国市場でも人気のある商品の発見や、ブランドの認知度が上がれば、東南アジア方面にもチャネルの幅を拡大予定だといいます。
千趣会を日常や違うシーンから広めていく
JR東日本と協業したことで、東京駅構内で「ディズニー ファンタジー ショップバイ ベルメゾン」を展開。ECチャネルのみならず、実店舗にも良い影響となり、集客に繋がる訴求ができました。
こういったイベントにより、幅広い層からの指示獲得や知名度にも繋がっていきます。
他にも、ベルメゾン会員のお客様を対象に「キマワリ」という宅配買取サービスを実施したところ、継続して購入くださるお客様が急増し、引き続きサービスを続けていくといいます。
どんどん成長するお子様の洋服の行き場、仕事に子育てと時間がない中で洋服の整理など、こういったお客様の悩みに寄り添った素敵な取り組みだと感じます。
他の企業と協力したイベントや商品開発による売上向上を図るために、今までとは違う形で可能性を広げ、止まることなく成長し続ける千趣会。
同じ方向や理念を持ち合わせた企業と手を組むことで、両社ともに良い結果に繋がる社会貢献の確立が目標だといいます。
(kimawari:https://www.bellemaison.jp/cpg/kimawari/top_index.html)
まとめ
大きな壁にぶつかった後にも、新しい可能性を見出し、様々な方向から挑戦してく大企業の姿勢は、違う環境で生きるどんな人へも共通して響く内容です。
また、改めてお客様と寄り添っていくことの重要性に気が付いた千趣会の立て直しは、勢いとスピード感があり、着実に改善に繋がっています。好調だったトラブル前と肩を並べる隙もないほどに、成長していく印象を抱きました。
何度失敗しても、失敗から学び、改善のために仲間に発信し、次の行動に結びつけることが大切です。
地道な作業の中から、些細な発見に気が付き、気が付いたことから変化を加え続ける諦めない継続性。それと同時に、未来を見据えた子会社設立や施策をタイミング良く実行できる行動力が印象に残る事例でした。
今後の千趣会の戦略の方向性を見守りながら、さらなる新しい施策や活動にも期待しています。