(株式会社ティンパンアレイHP:https://www.tinpanalley.co.jp/)
1985年6月16日原宿竹下通りに1号店をオープンした古着屋RAGTAG。
デザイナーズブランドの古着屋をオープンしたきっかけは、株式会社ティンパンアレイの創業者の高橋さんが、青山のブランドショップに立ち寄った時のことでした。高価な商品を目の前に女子高生たちの“かわいいけど高くて買えないね”という会話を耳にします。
とても切ない気持ちを抱いたという高橋さんは、古着のイメージを変えて、「これが古着?」と感じていただけるような一人の願いを叶えられるショップを展開したいと思ったといいます。
「欲しいと感じた着たい洋服を想い存分楽しんでほしい。おしゃれがしたい純粋な気持ちに寄り添って、応援したい。」
世界的に、フリマアプリによるファッションリユース市場の拡大が進んでいて、洋服のCtoCは抵抗のない世の中となりつつます。
RAGTAGのこだわりの詰まった洋服の品揃えとECサイト運営。買い手も古着を購入する場所と買う場所を選ぶようになってきています。ファッションに敏感なお客様が、よりオンラインでお買い物を楽しんでいただくための工夫とは?
※RAGTAG原宿店
目次
現在のRAGTAG販売領域と状況
国内に22店舗を展開するRAGTAGは、1999年からECに参入しました。
当時から、自社サイト以外にも楽天やAmazonなどの大型モールに出店。また、マーケットプレイスとしてフリマアプリのラクマやメルカリにも販売しています。今では、海外の複数のモールや、海外自社ECサイトをオープンし、販売領域を拡大しているといいます。
店舗は、海外からの人気が高かったRAGTAGは、コロナ後も海外ユーザーにより売上が安定。それが理由で単価もアップ、3割程度がインバウンド需要で占めています。
世界的に需要が伸びているリユース業界だからこそ、確実に上がる売上を見据えた海外向け販売に期待しているといいます。国内のお客様の購入も増加していて、買い取り数以上に好調な売上となっていることから、買い取りの強化にも取り組んでいます。
(RAGTAG Online:https://www.ragtag.jp/)
ハイブランド、且つ1点物商品のサイズ把握の工夫
RAGTAGの強みは、買い取った商品に偽物がないか厳しく見分け、本物のみを店頭に並べ、お客様の信頼に繋げている優秀なバイヤーたちがいることです。年間の買い取り商品数は80万ほどあり、さらに5000以上のブランドの知識をもとに値付けと査定を行っています。
バイヤーがお客様から引き取った商品は、サイトに反映されますが、1点ものであることから、サイズ感や使用感がお客様の気になるポイントとなります。
そういったお客様の不安を解消できるように、ECサイトで見た商品を店舗で試着することができるサービスがあります。商品ページには、「カートに入れる」以外に、「店舗で試着してみる」が選択できる仕様となっていました。
また、オンライン試着室として「バーチャサイズ」という機能もご利用いただけます。
自身でメジャーで測った希望のサイズや購入履歴の商品とのサイズ比較が可能となっていました。フィット感を確認できる「FITTING ROOM」の用意もあり、とてもリアルな購入体験ができます。
実際に試着したい商品に関しては、3枚まで店舗に取り寄せることができ、そういったお客様の好みによって、地域ごとに置いてある商品も変化し、土地に合うニーズにハマった店舗が出来上がっていくのだといいます。
※RAGTAG Onlineで動画説明があります。
カスタマーアシスタントのコンテンツ発信
RAGTAGでは、販売スタッフは「カスタマーアシスタント」と呼ばれています。
販売スタッフは、お客様より知識が豊富なプロです。しかし、スタッフが発信できるコンテンツがなければ、お客様におすすめしたい商品があっても、EC上の接客や集客はできません。
その点、RAGTAGのWEB接客はスタッフコンテンツが充実している印象でした。RAGTAG Onlineショップで、スタッフ直々に記載した商品紹介の「SHOP BLOG」、スタッフ着こなしが動画で見れる「MOVIE」、1weekコーデがまるまる参考にできる「ウェブマガジン」など、今時で見やすくおしゃれが伝わるコンテンツとなっています。
特にウェブマガジンに関しては、雑誌を見ているような感覚で読むことができます。
どの店舗のスタッフなのかわかるため、理想のコーデを見つけた際には、直接お会いしてアドバイスをもらえるため、スタッフ意識向上にも繋がるように感じます。
(MOVIE:https://www.ragtag.jp/VISUMOMOV/)
(ウェブマガジン:https://www.ragtag.jp/closet/)
買い取りサイトのリニューアルと広告のコスト管理
近年、WEB広告は、高騰傾向にあるといいます。
さらに、ファッションリユース市場の需要が上がっているため、商品の消化ペースが速まっています。15万個以上取り揃えている商品の充実が強みのRAGTAGは、こういった状況をカバーするために、買い取り強化をする必要がありました。しかし、広告料金高騰の影響で、以前より広告に頼ることは難しいため、他の方法で買い取りを強化する工夫を行ったといいます。
例えば、店舗以外でも売る場所が提供できるように郊外へ買い取りサービスの出張、買い取りカウンターの設置も開始。さらに、売りたい商品の買い取り価格が一目で分かるページの追加など、買い取りサイトもリニューアル。ページが分かりにくいことでの離脱防止やお問い合わせ軽減にも繋がります。
また、LINEに画像を送信するだけで、商品の買い取り査定の依頼ができる仕組みも計画中とのことでした。
(株式会社ティンパンアレイ主催 ニセモノ展:https://www.ragtag.jp/project/nisemonoten/)
世界に一つだからこそ、探している商品を見つけられるサイト作り
縦積みで在庫があるわけではないため、1点の良さを引き出すためにどの程度のコストを掛ける必要があるのか、バランスが取りにくいリユース市場。
ファッションが好きなお客様が目的をもって探すからこそ購買率も高いため、欲しい商品に辿り着ける導線作りが重要です。
しかし、1点物の商品数が多いことが強みであるRAGTAG Onlineは、その分どうしても動作が重たくなってしまいます。お客様からも、「動作が遅い」とクレームが入ったことも。
そこで、お客様が閲覧自体にストレスを感じないように、商品数に左右されることなく快適な操作が叶うツールを導入。それにより、検索時の表示速度が2倍近くにアップし、お客様からのクレームもなくなったといいます。
日本人約1000人に検証した結果、検索画面が表示されるまでに2秒かかるとストレスに感じ、3秒かかると離脱するということが分かりました。
検索表示のスピードは速ければ速いほどお客様の購入意欲は保たれるため、サイトデザインを凝りすぎて、または商品数が多すぎて動作が鈍い場合は、早急に改善する必要性がありそうです。
今後の展望、課題
今後は、アパレルならではの曖昧なワードで探している方やさり気なく訪れたお客様にも活用しやすいように、レコメンドを意識した検索機能へと改善したいといいます。
また、1日数十点もの商品の値付けを行うバイヤーの価格比較用など、社内ツールの検索機能充実も検討中のようです。
スタッフブログやバイヤーの優秀性など、様々な面でスタッフ全員が前向きに取り組んでいる姿勢が伝わります。LINE査定が可能となれば、作業効率も上がり、さらにお客様が増加するのではないでしょうか。
顧客満足をより上げる目的で、アンケートも定期的に行っている株式会社ティンパンアレイ。アンケートに書かれた内容を元に、画像枚数を増やす。取り寄せ商品のイメージ違いの改善に努めてといいます。
※写真で探す機能があり、ニュアンス検索ができる
まとめ
働く一人ひとりが洋服に愛を持つ株式会社ティンパンアレイ。
原宿店にお邪魔したことがありますが、どの商品も目を引き、どれもが綺麗な印象でした。キズや汚れがある商品には、タグに詳細が付けられているため、購入してから不満に感じることは少ないのではないでしょうか。
古着だと感じさせない工夫や、店内の雰囲気は、自身もおしゃれになれたような感覚を抱く空間です。
RAGTAGに置かれている商品は、デザイナーズブランドの商品が多いため、価格帯に関しても信頼が大切です。そういった信用を少しづつ、でも確実に積み上げてきたスタッフたちの惜しまない努力に魅了されるブランドです。